耐震等級とは
「耐震等級」とは住宅の耐震性能、つまり住宅がどれだけ地震に強いかを示す指標です。
かつての日本では、住宅の耐震性能を表示する共通ルールがなく、性能比較が困難な状態でした。
そこで国は1999年に「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」を定め、その翌年からは住宅性能を一般消費者にもわかりやすく表示するという「住宅性能表示制度」をはじめました。
住宅性能表示制度では、住宅の耐震性能を「耐震等級」という3段階のランクによって表示します。耐震等級の数字が大きいほど耐震性能が高いことを表しています。具体的な耐震等級ごとの耐震性能の目安は以下の通りです。
ここでいう「きわめてまれに発生する大地震」とは、数百年に1回程度の頻度で発生する大規模地震のことで震度6強~7を想定しています。実際に起きた地震でいうと、1995年の阪神淡路大震災や2011年の東日本大震災が、この「きわめてまれに発生する大地震」に当てはまります。
この耐震等級によって、専門知識がないとわかりにくい住宅の耐震性能について、一般消費者でも簡単に見分けることができるのです。
耐震等級1
耐震等級1は「きわめてまれに発生する大地震による力に対して倒壊、崩壊しない程度」と定義されます。
これは建築基準法がすべての建物に求める最低限の耐震基準と同程度ですので、建築基準法に則って建てられた建物であれば、無条件で耐震等級1であるということができます。
「大地震で倒壊しないのなら耐震等級1で十分なのでは?」と思われるかもしれません。確かに耐震等級1は、人命を脅かすような倒壊、崩壊を起こさない基準ではありますが、住宅の損傷はまぬがれることはできないでしょう。大地震後にそのまま住み続けることは難しく、大規模な修繕が必要になる可能性が高いです。
耐震等級2
耐震等級2は「耐震等級1で想定される地震の1.25倍の力に対して倒壊、崩壊しない程度」と定義されます。
具体的には学校や病院などの公共施設と同じくらいの耐震性能があるとされています。というのも学校や病院といった災害時の避難場所に指定されるには、耐震等級2以上が条件となっているのです。
また「長期優良住宅」に選ばれるためにも、耐震等級2は必須の条件です。長期優良住宅とは、長期間にわたって住民が安全かつ快適に暮らせるよう、さまざまな工夫が採り入れられている住宅のことです。長期優良住宅に認定されると、住宅ローン控除や不動産取得税、固定資産税といった各種税金で優遇を受けることができます。
耐震等級3
耐震等級3は「耐震等級1で想定される地震の1.5倍の力に対して倒壊、崩壊しない程度」と定義されます。
具体的には消防署や警察署と同じくらいの耐震性能があるとされています。消防署や警察署のような災害時に復興や救護活動の拠点となる施設には、耐震等級3が求められるのです。
耐震等級3は現在最高のランクであり、もっとも厳しいチェックが行われるため、大地震に対して十分耐えうる耐震等級であるといえます。
耐震等級3「相当」ってなに?
ハウスメーカーや工務店の宣伝文句として「耐震等級3相当」という言葉を目にしたことがある人もいるかもしれません。「耐震等級3」と「耐震等級3相当」は何が違うのでしょうか。
結論、専門機関の認定を受けているかどうかの違いです。前述したとおり、耐震等級1は建築基準法の最低ラインですから、認定を受けるまでもなく耐震等級1が証明されます。しかし、耐震等級2、3を公式に認定されるためには、住宅性能評価機関の審査を通過する必要があるのです。
審査及び認定には20万円~30万円の費用がかかります。ただし、長期優良住宅の認定を受けたり、地震保険の耐震等級割引を利用すれば結果的にお得になることもありますので、耐震等級の認定を受けるかは要検討です。
耐震基準と耐震等級の違いとは
結論、耐震基準は「人命を守ること」を目的にしているのに対し、耐震等級は「人命に加えて建物自体を守ること」を目的としている点で大きく異なります。耐震基準と耐震等級はそれぞれ建築基準法、品確法という別々の法律によって定められており、そもそもの考え方が違うのです。
現在の耐震基準(1981年以降)では、住宅が「震度6強~7の大規模の地震動で倒壊・崩壊しない」ことを前提としています。これは耐震等級1と同じ程度の耐震性能です。
つまり現在の耐震基準にのっとって建てられた住宅であれば、耐震等級1以上の耐震性能はあるということができます。さらに耐震等級2、3であれば耐震基準+αの耐震性能をもっているということになります。
耐震・制震・免震の違いとは
地震に対する備え方として「耐震」「制震」「免震」という3つのワードを聞いたことがある人も多いと思います。これらは何が違うのでしょうか?
耐震は文字通り、地震の力に対して建物の強度によって耐える工法です。耐震は地震に備えるための最も基本的な考え方であり、最低限建物の倒壊と人命を守るのに役立ちます。具体的な工法としては、壁の中に斜めの筋交いをいれるというのが基本です。
制震は、地震の力を吸収することを目的とした工法です。免震と比べて安いコストで施工することができ、耐震よりも建物の被害を抑えることができます。具体的な工法としては、タンパーと呼ばれる揺れを吸収する装置の設置が基本です。
免震とは、地面と建物をできる限り切り離し、そもそも揺れを直接受けないようにする工法です。3つの中で最もコストがかかりますが、建物のダメージを最小限に抑えることができます。具体的な工法としては、アイソレータと呼ばれる免震装置の設置が基本です。
まとめると、耐震・制震・免震の違いは以下の通りです。
耐震等級が高い住宅のメリット
耐震等級が高い住宅のメリットは以下の3つです。
●大地震発生時に倒壊のリスクが低い
●地震保険料が割引になる
●住宅ローンを低金利で借りることができる
それぞれ詳しく解説していきます。
大地震発生時に倒壊のリスクが低い
当然ですが、耐震等級の高い住宅は大地震発生時に倒壊のリスクが低くなります。
国土交通省住宅局が行った「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」報告書によると、左側の棒グラフで示した建築基準法レベルの住宅、つまり耐震等級1レベルの住宅では7棟が倒壊、12棟が大破、33.6%が何かしらの損害を受けていることが示されています。一方、右側の棒グラフで示された耐震等級3の住宅では、倒壊・大破した住宅はゼロ、さらに87.5%の住宅が無被害で済んでいることがわかります。
つまり、熊本地震において耐震等級3で倒壊した住宅はなかったということがわかっています。よって耐震等級を上げることによって実際に住宅の倒壊リスクを下げることができると言えるでしょう。
地震保険料が割引になる
地震による損害を補償してくれる地震保険料は、住宅の耐震等級が高いほど安くなります。
●耐震等級1の住宅は10%
●耐震等級2の住宅は30%
●耐震等級3の住宅は50%
上記の割合で保険料が割引になります。
なお地震保険は「地震保険に関する法律」に基づき、政府と民間の損害保険会社が共同運営している保険です。耐震等級の条件を満たしていれば、どの地震保険に加入していても同様の割引が受けられます。
住宅ローンを低金利で借りることができる
フラット35では住宅の技術基準レベルが高いほど、金利で優遇をするという仕組みを用意しています。
具体的には、耐震等級2かつ免震建築物の条件を満たす住宅であれば、当初5年間の金利が0.25%引き下げられます。さらに耐震等級3の住宅であれば、当初10年間0.25%の金利引き下げを受けることができます。